可愛いものが好きな先輩は,ちっとも可愛くない。


「可愛い"もの"ね。嫌いなのは人だって言ったでしょ?」



嫌い?

それは,あの人のこと?



「えっ……でも,昨日だって一緒に」



今度は,驚いた顔の先輩。

驚いているのはこっちなのに。


「見てたの? いつ? ……僕,楽しそうに見えた? めんどくさくて,迷惑だから無視してたはずなんだけど」



首をかしげるはも先輩にもに,私もついえっとと思い出す。

そういえばはも先輩の顔,見てない。

だって,見れなかった。

そんなの見れないと思った。

……なんで??

新たな疑問に考えていると,はも先輩がが話し始める。



「あーゆー外見だけに寄ってきて僕の意思を無視したような人が1番きらいなの。普段は言わないでいてあげたのに」



ぽんと頭を撫でられる。

じゃあ,それでも今日かばってくれたのは。

私の,ため?



「だから,途中で我慢してやめてくれたんですか?」



もし私が驚いて声をあげなかったら。

先輩はもっと追い討ちをかけようとしただろう。

それはきっと,気のせいなんかじゃない。


「……うん。翠ちゃんに嫌われたい訳じゃないからね。びっくりした?」

「はい。会ったばかりだけど,はも先輩はいつもにこにこして,あんな風に言葉を使うことは初日以外なかったから」

「翠ちゃ……」


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