可愛いものが好きな先輩は,ちっとも可愛くない。
後悔するような音が聞こえたあと,はも先輩を迎えに来たように秋先輩がやってくる。
「……光。お前,またやったのか」
「また,って?」
「今はましだけど,昔はよくあんな風に女子を追っ払ってたから」
はも先輩も大変だったのかな,と想像する。
……あ。
私のために怒ってくれたのに,責めるようなことばかりだけを言ってしまった。
お礼も言わず,どうしてそんなこと。
落ち込んでいる私を横目に,秋先輩が言う。
「光。ケーキ忘れてないか? 昼休みが終わる」
「! そうだった!! 翠ちゃんっ来てっ」
優しい笑顔に振り向かれ,ほっとする。
よかった,もう,いつもの先輩達だ。
誘うように走っていくはも先輩をみて,秋先輩は私の傍らに立った。
そして,小さく話しかけてくる。
「びっくりしたかもしれないけど,許してやって。あんな風に言われたら,光もこれからはもっと上手くやるようになると思うから」
「はい。これで嫌いになんて……なれるわけ,ないです」
思いやってくれて,誘ってくれて。
とても優しい人だから。
内側にいれてくれる人が,今はまだ少ないんだとしても。
せっかく認めてくれたのに,離れたりしない。
さっきの先輩のことは,秋先輩がフォローするのかな,と2人の関係について考える。
ようやく他の人がいなくなった実感を得て,部屋へ安心して踏み入れた。