可愛いものが好きな先輩は,ちっとも可愛くない。
目の前に広がるプチバイキング。
「わ。あ」
「びっくりした? すごいでしょ。全部秋が作ったんだよー!!」
「プチケーキ? これを,秋先輩が全部?!」
「先に僕たちで並べてた方が,そういう反応見れるかなって。僕が呼びに行く前に翠ちゃんの方から来てくれてうれしい」
更に3つ程取って持ってきてくれる先輩。
「お弁当食べ終わったら,もっと好きなのとってね。僕のおすすめはこれ!」
受け取り,私も笑顔で返す。
「いいんですか? 秋先輩」
「ああ。これはそもそも,南に歓迎の意を伝えようと作ったものだから。先輩後輩ではあるけど,光をよろしく」
秋先輩はただ優しいんじゃなくて。
すごく,はも先輩のことが大切なんだ。
階段でのことも思い出し,ぱくりと受け取ったひとつを食べる。
「おいしいです」
見上げると,柔らかく微笑まれる。
昼休みも残り10分。
ようやく食べ終わり,全員でふぅと息をつく。
落ち着いてまったりとして。
静かになると,はも先輩は私をみてこんなことを言った。
「翠ちゃんは……すっごい自己犠牲型の受け身だよね」
「え?」
「思えばそうだなって。初めてあった時に僕に言い返したのは,ほんとは凄く珍しいことなんじゃない?」
図星だっため,うっと黙る。
今となってはあれくらいと思える出来事で,あんな風に言い返すことなど初めてだった。