可愛いものが好きな先輩は,ちっとも可愛くない。
周りの視線が気になって,1人で広げたお弁当。
黙々と食べて,それが終わったら小説を読んで。
放課後までの授業をなんとか乗りきって。
ようやくやってきた放課後に,私は教室から逃げるようにして校内探検を開始する。
だけど,学校の作りはどこも変わらないようで……
迷うようなこともなく,私は1部屋1部屋をゆっくりと眺めて歩いた。
使う場所,使わないだろう場所,使われていない場所。
名前のプレートを見ながら,少しずつ場所を覚えていく。
最後の,3つ目の校舎。
私ははしっこの暗い部屋が目に留めた。
大きな,両開きの扉。
最後だからと開けてみると,無造作に積まれた本の山が目の前に広がった。
ここは……?
使われていないのか,名前のプレートは白塗りになっている。
倉庫のような扱いなんだろうか。
入って良かったのか迷って,私は一度後ろに一歩下がる。
けれどそのような注意書は無かったので,私はもう一度その部屋を覗いた。
すると,一度目に気が付かなかった存在が目に入る。
積み上がった本の向こう側,部屋の真ん中に椅子が3つ並べられ,細く柔らかそうな栗毛の男子生徒が小さくなって寝ていた。
誰なのか,途端に気になって,私は少しだけ近寄ってみる。
顔を覗き込むと,その人は肩幅が小さく,綺麗な顔をしていた。
ここで,何をしているんだろう。
どうして寝ているんだろう。
こんなに華奢で綺麗な人が,本当にいるんだ。
好奇心のまま,驚きが隠せない。
同い年か年下にも見えるのに,履いているスリッパをみるに先輩だ。
ぱちり。
突然,眠っていたその人がなんの脈絡もなく瞳を開ける。