可愛いものが好きな先輩は,ちっとも可愛くない。
「じゃじゃーーっん」
着いたのは動物園。
「初めからあれもこれも決めろなんて思ってないから」
目の前に広がる,パークの門。
……動物園。
自分を見つめる先輩を見返して,私はぱっと表情を和らげた。
「私! 動物園って大好きです!!!」
「っ。はは」
突然吹き出すはも先輩。
「やった。大正解だ」
「はも先輩?」
ぱちりと返すと,はも先輩は走り出す。
「待ってて。翠ちゃんの分もちゃんと買ってくるから」
買ってくるって……
券売機に向かうはも先輩。
人が少なかったからか,走って追いかけると既に2枚のチケットを手にしていた。
ぎょっとする私。
「今払います!」
叫ぶように言うと,はも先輩はくるくると逃げ回った。
「あはは。いーのいーの」
「でもこういうのは早めじゃないと,それに,忘れちゃうかもしれないし」
「なんだ。そっち? 僕が払うよ,これくらい。僕,秋の家でバイトしてるし,連れてきたのも僕だから」