可愛いものが好きな先輩は,ちっとも可愛くない。
そんなっ。
1人じゃ来ない場所にまでつれてきて貰って,さらに奢りなんて……
さらに逃げ回り,最後にひらりと券を渡す先輩。
「好きなんでしょ? 時間,なくなっちゃうよ?」
ず,ずるいっ!!!
だから朝からの集合だったんだ。
私が一日中楽しめるように。
「お,お昼は……私が払います,から」
精一杯の抵抗に,券で顔を隠す。
「ふっ」
また笑っ……
「がんこ」
笑っている。
何だか~ーっみたいな,やりとり。
なんて,思ってしまうのは……
私じゃくても,仕方ないんだよね……???
『デート』
今さら,今さら。
先輩は大きな意味なんてなにも。
「最初は何がいい? 右と左,どっちがいい?」
えっとねー,と,それぞれに待つ動物を教えてくれる。
「猿のみちから」
「うん。右ね」
ふいにこつんと手が触れた。
ぱっと離して,ついうつ向く。
これじゃ私,いしきしてるみたい。
手が振れたことよりも,そんな自分が1番恥ずかしい。