可愛いものが好きな先輩は,ちっとも可愛くない。
「翠ちゃん……どうしたの?」
柔らかく落ちる声。
「あの,私……楽しいです,今日」
答えてなかったから。
「そ,それだけっ。です」
ぱっと手を離す。
「よーーっし。じゃあ,もっともっと一杯楽しめるよーに,ほら,早くいこっっ!」
ぱしっと捕まる手。
ぐいんと引っ張られて,前に傾く。
うそ,うそ。
はも先輩,気付いてますか?
それとも,気にしてないだけですか??
早く早くと急かすはも先輩からは無邪気さしか感じ取らなくて。
学校でも思ってたけど。
はも先輩って,結構せっかちだ。
はも先輩と目があって,にこりと笑われる。
その笑顔からは,何を考えているかなんて分からなかった。
ただのせっかち,ですよね……?
このドキドキは慣れていないせい。
指先から全て聞こえてしまいそうっっ。
「食べたらどこに行く?!」
「っゲーム,センターー!! で,クレーンゲーム,が,いいですっっ!!!!」
もうどうにでもなれと,私はがむしゃらに走り叫んだ。
どうしよう。
はも先輩の笑い声に,つられちゃうよ。