可愛いものが好きな先輩は,ちっとも可愛くない。
「ゲームセンターって,翠ちゃん意外」
「へ,変ですか?」
「んーん,そういうのもっとみたいの。あのね,僕もたまに来るよ。秋にぬいぐるみ取ってもらうの」
想像できるな。
放課後や休日も,2人は当たり前に会うんだとほほえましくなる。
「今日,は。何か欲しいもの,ありそうですか?」
私も,秋先輩みたいに取れたらいいけど。
こういうの聞くのって恥ずかしい。
上手なわけでもないから,思ったより勇気がいるな。
「僕はいいよ。今日は翠ちゃんが」
「いいえ。気を使ってるわけじゃなくて。私が,その」
何か伝わっただろうか。
先輩は静かになって,周りをぱっと見渡すと
「あれ」
と指をさした。
これじゃあまるで,気を使ってくれてるのは先輩の方。
だけど見上げると,きらきらした目が待っている。
「あ,あれにしましょう!! ……でも,大きいですよ。邪魔になりませんか? 取れたらの話ですけ」
「ならないよーっ」
くいっと裾を引かれる。
えへへと効果音がつきそう。
どきどきと100円を投入。
丸いスティックを動かす。