可愛いものが好きな先輩は,ちっとも可愛くない。
「かわいい……! ……っうれしい!!!」
ぎゅうっと抱き締める。
そのまま思わず跳び跳ねた。
「先輩,はいどーぞ!!」
「え,でも翠ちゃん,そんなに嬉しそうなのに……いいの?」
「いいんですよ!! 最初から先輩にあげたくてとったんです。もし本当にいらなくないなら,貰って欲しいです」
先輩に,笑って欲しいから。
「もし僕がいらないって言ったら,翠ちゃんはそれでもいいの?」
何を思ったか,下から覗き込んでくる先輩。
もし,本当のことを言ってもいいのなら。
ぎゅっと抱き締め直す。
「それでも。先輩に受け取って欲しいです」
今日の思い出に,なったら嬉しい。
「あっすみません! 先輩のなのに私」
抱き締めちゃった!!
細い両手が伸びてくる。
わっわっ
ぎゅっとクマに抱きつく先輩。
私がまだ持ってるのに……!
一瞬,私が抱き締められたのかと思った。