可愛いものが好きな先輩は,ちっとも可愛くない。


「は……わ。ご,ごめんなさい」



覗いていたこと,突然それがバレたこと。

とてつもない罪悪感が生まれ,私は反射的に謝罪を口にした。

人形みたいに綺麗なその人は,ため息をはき,髪の毛をかき回しながら起き上がる。

私を見返す瞳が冷たくて,私はひやりとした空気に驚いた。

こんな風に見られたことなんてない。

私はもしかして,物凄く,この人を怒らせてしまったのだろうか。

戸惑っていると,もう一度何かを言う前に先に口を開かれてしまう。



「誰? 君。せっかく気に入ってたのに……どうやって見つけたの?」



見つけた?

まるで私が,どこからかこの人を差がしに来たみたいに言う。

見つけるもなにも,私はこの人のことなんて少しも知らないのに……


「なんの話を」

「人の寝顔黙って眺めて,サイテー。早く出てってくれない?」



一方的に拒絶され,私は言葉を失った。

どうして,見ず知らずの先輩にここまで言われないといけないの。



「私は……転校してきて,今日が,初登校で……だから,学校の教室を早く覚えなきゃって回ってて」



興味の無さそうだった先輩が,話し始めた私にぴくりと反応する。

だけど,もう止まろうとは思えなかった。



「教室じゃ何にも上手く出来なくて,せめて今日は最後にこれくらいやりきろうって,それだけだったのに。……こんな良く分からない所で人が寝てて,ちょっと気になって,何が悪いの」



せめて少しくらい,言い訳させてくれるぐらい,だめなの?

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