可愛いものが好きな先輩は,ちっとも可愛くない。
side秋
ーside秋ー
「南,来なかったな,今日」
南を保健室に連れていった後。
驚く先生に許可をとり,南をベッドに下ろした。
そのままシーツへと吸い付く様に南は眠って,その熱の高さから保護者へと連絡が行き,迎えか来てそのまま帰宅した。
翌日の今日も,良くはならなかったのか登校してきてはいない。
多分今日は流石にもう来ないだろう。
むしろ来たら追い返そうと思う。
「うん,そうだね。早く,元気になるといいけど」
目の前にいる光だって,そんなことは分かっているはずなのに,光は寂しそうな顔を隠しもせずケーキをつついていた。
にしてもよく分かったなと思う。
一目見て,すぐに気付いた。
南のためにも光には言えないけど。
正直,南はこのところ誰が見ても光に対しての挙動不審が続いていた。
光も分かっていて,あえて知らないふりをしているのだと思う。
挙動不審な上に,過剰な赤面。
熱によるものとの判別なんて,正直普通に話していた俺にはつかなかった。
「僕のせいかなあ,秋。僕,この間ね,翠ちゃんの反応が嬉くて,少し構いすぎちゃったのかもしれない」
ふぅとため息を吐く。
こいつは,いつもいつも。
無茶苦茶に,誰よりやりたいことを優先しながらも。
繊細で,気を許している俺の前では直ぐに気にしたように落ち込む。
なんて面倒な幼馴染みなんだろう。