可愛いものが好きな先輩は,ちっとも可愛くない。
それに……そもそも無理だろ,光。
お前にそんなつもり,少しもないんだから。
にこにこと飲み込んだ光は,相変わらず何を考えているか分からない。
予想不可能で,そんな時ほど光は怖い。
誰にも,抗えない事を考えているのだ。
「大丈夫かなあ,翠ちゃん。明日は来るかな,会いたいな。ねー,秋」
ずっと俺だけだったのに。
幼馴染みの小さな成長が,とても眩しい。
初めてだったんだ。
扉を開けて,あんな風に声をあげて笑っている光を目にしたのは。
南 翠。
光が初めて,恋をした相手。
だから,どんなやつだとしても受け入れようと……あの日,あの瞬間に決めていたんだ。
「そんなに気になるなら,見舞いにでも行けばいいんじゃないか」
家を挟んで隣だと,そういっていたはずだ。
ぴんと光の背筋が伸びる。
「いい案だね,秋」
にやりと楽しげに笑った光。
南も南なら,光も光。
どっちも,俺にとっては分かりやすい。