可愛いものが好きな先輩は,ちっとも可愛くない。
「確かに起こしてしまったのも,寝顔を見たのも謝りますけど……だからってそこまで言われる筋合い,ないです……!!」
ぐっと拳を握って,先輩を見返す。
どうしてか顔に力が入って,私は泣きそうになった。
生まれた沈黙に耐えきれなくなって,私は来た道を走り戻る。
「お邪魔して,すみませんでした……!!!!!」
惨めで,悲しくて。
何か,呼び止められた気がしたけど。
私は振りきるように,階段をかけ下りた。
来たくて来たんじゃない。
それを,あんな風に突き放すなんて……
上手くやっていけそう,なんて。
昔から転勤と引っ越しを繰り返してきた両親には,つい,嘘をついた。