可愛いものが好きな先輩は,ちっとも可愛くない。
「はい,あーんっ」
ハートがつきそうな楽しげで甘い声。
そうすれば断れないと思って,もしここに机があったなら,頬杖でもついて微笑んだのだろう。
震える唇を開く。
ぱくりと口に含んだ甘さと冷ややかさは,じんわりと喉を通った。
「どう? 治りそう?」
ピピっと音がして,体温計を差し向ける。
「もうっ。治ってます!!!」
「じゃあ,明日も会えるね」
にひひと,目の前で,私の事を見て。
なんですぐ,そういうことを簡単に。
私は,私は……っ
その笑顔を見ると,おかしな気分になるんです。
燃えるように,顔が熱くて。
「これ,僕の」
「貰ったぬいぐるみと,洋服です」
勉強机に座らせたうさぎのぬいぐるみ。
貰ったばかりのお揃いの服を着せて,そのとなりには元々着ていた服を飾っている。
見るたびに,はも先輩を思い出す。
やっぱり,嬉しい。
思い出すのも,今目の前にいるのも。
こんな風にお見舞いに来てくれて,甘やかしてくれるのも。
私は,はも先輩の事が。