可愛いものが好きな先輩は,ちっとも可愛くない。
「で,」
「?」
「出てって,出てってください!! とりあえず! 着替えますから!!!」
布団で隠しながら,余った部分でぱふぱふと動かす。
「翠ちゃん,翠ちゃん」
埃がたちそうなほど布団を動かす右腕を,先輩は優しく握った。
あ……ぅ
「大丈夫。かわいーよ。着替えなくても,恥ずかしいならもう僕も帰るから」
「まっまっ……まって,ください」
もし,もし本当に私が彼女でいいなら。
もし誰かと付き合うなら,真っ先にやってみたいと思っていたことがある。
「だ」
「だ?」
「だきしめても,いいですか……? 先輩のこと」
「ぇ」
先輩の声が震えた。
見上げると,顔を真っ赤にして驚いている先輩がいた。
先輩,照れてる……?