可愛いものが好きな先輩は,ちっとも可愛くない。
変化は永遠へ。
夜になり,全快した私。
帰ってきたお父さんがご飯を食べ終わるのを待って,私は声をかけた。
「お,お父さん」
「ん?」
「あのね,今回の赴任っていつまでだったっけ」
「んー。3年弱,だったかな」
3年……
「私,その時には大学生になってる,と思う。お父さんは落ち着くまで家にいていいって言うけど」
「え……。翠?」
「もし,援助してくれるなら。私,次の移動は……ここに,この地域に残りたい……です」
もう,1から再構する関係は,作れない。
お父さんのことも,お母さんのことも大好きだけど。
ようやく,ようやく友達もできそうで。
だからこれからは,もっとわがままに。
自由に。
自分のために選んでいきたい。
「そうか」
そう答えたお父さんは,どんなときよりも優しい目をしていた。
『可愛いものが好きな先輩は,ちっとも可愛くない』
ーFin