可愛いものが好きな先輩は,ちっとも可愛くない。
はも先輩の素顔。
翌朝,冷静になった私は,学校探検中のあの出来事を思い出して,自己嫌悪に陥っていた。
暴言を吐いて,一方的に逃げ出して。
あの人には関係のない自分の事情まで一方的に話した挙げ句,逃げ出した。
名前も知らない人に,なんてこと……
100%自分が悪かったとまでは思わないけど,自分のしたことは自分のしたこと,また別の問題なのだ。
いつか会ったら,謝ろう。
あの人はもしかしたら,日常的にあの教室を使っているのかもしれないけれど。
また自分から会いに行って怒られる勇気まではない。
登校しながら,いつものしゃらりといった音が聞こえない事に気が付く。
鞄へと目を落とすと……ない。
お気に入りのぬいぐるみキーホルダーが,鞄から消えていた。
いつ,どこで落としたんだろう。
金具が緩まってきていることには気付いていたのに,すぐに変えなかったから……
またひとつ,勇気がしぼむ。
朝から泣きそうになって,それでも何とか私は教室までの道のりを歩いた。