御曹司様、あなたの子ではありません!~双子ベビーがパパそっくりで隠し子になりませんでした~
プロローグ
空と海がオレンジに色づく。反対に周囲の建物は影と同化し、色を吸い取られたかのように黒い。世界が二色に染まる夕暮れのひととき。
三月の中旬、ここ東京湾に面する海浜公園は、風が冷たく春とは程遠い寒さだ。浜辺を歩く物好きは、私たちくらいのものである。
コートの上からじわじわと侵食してくる冷気。けれど、繋がれた手は温かい。
絡み合った指先に力を込めると、気づいた彼が覗き込んできた。
「そろそろ戻ろう」
私の体が冷えてきたと思ったのだろう、肩を抱いて車に向かおうとする。そんな彼を、私は引き留めた。
「もう少し、もう少しだけ」
ふたりがようやく恋人になれた思い出の地、だからこそ離れがたい。
彼は困ったように微笑むと、私を抱き寄せて寒さから守ってくれた。
……たった一年。これまで一緒に過ごしてきた二十年を思えば一瞬のはずなのに、それでも寂しさが込み上げてくる。
「ひとりにさせてすまない」
彼が繋いでいた手を持ち上げて、唇に添える。
「謝らないでください」
私は慰めるみたいに、その手を握り返した。
三月の中旬、ここ東京湾に面する海浜公園は、風が冷たく春とは程遠い寒さだ。浜辺を歩く物好きは、私たちくらいのものである。
コートの上からじわじわと侵食してくる冷気。けれど、繋がれた手は温かい。
絡み合った指先に力を込めると、気づいた彼が覗き込んできた。
「そろそろ戻ろう」
私の体が冷えてきたと思ったのだろう、肩を抱いて車に向かおうとする。そんな彼を、私は引き留めた。
「もう少し、もう少しだけ」
ふたりがようやく恋人になれた思い出の地、だからこそ離れがたい。
彼は困ったように微笑むと、私を抱き寄せて寒さから守ってくれた。
……たった一年。これまで一緒に過ごしてきた二十年を思えば一瞬のはずなのに、それでも寂しさが込み上げてくる。
「ひとりにさせてすまない」
彼が繋いでいた手を持ち上げて、唇に添える。
「謝らないでください」
私は慰めるみたいに、その手を握り返した。