御曹司様、あなたの子ではありません!~双子ベビーがパパそっくりで隠し子になりませんでした~
私は空港の展望デッキから彼の乗せた飛行機が飛び立つのを見送る。

左手の薬指に輝くダイヤにそっと口づけて、無事に再会できる日を夢見た。




それから三カ月。

私は電話番号も、住む場所も、職場すらも変えて、彼と連絡を絶った。

『皇樹のことはあきらめてもらえませんか?』

彼の叔父、三条洸次郎(さんじょう こうじろう)からそう声をかけられたのは、彼が日本を経った一カ月後のことだ。

私の勤め先までわざわざ訪ねてきた彼は、どうか甥から手を引いてほしいと床に頭をつけて頼み込んできたのだ。

久道グループのトップに立つ皇樹さんのお父様は、持病の具合が芳しくなく、早急に代替わりが必要。しかし、後継となるための皇樹さんはまだ若く、今、経営者となるための実績と経験を必死に積み上げている最中である。

『皇樹は幼い頃から教育を受け、経営者としては卓越している。だが、あの若さだ』

まだ若い青年の代表就任に抵抗を覚える人間も多い。彼が就任するには、周囲を納得させる建前が必要だ。

『それが後ろ盾の存在――つまり、政略結婚です』

< 10 / 158 >

この作品をシェア

pagetop