御曹司様、あなたの子ではありません!~双子ベビーがパパそっくりで隠し子になりませんでした~
定時の十八時、まだ売り場にはお客様が残っているけれど「芙芝さん、あがって大丈夫だよ」と吉原さんたちに後押しされ、スタッフルームに引き上げた。

帰宅の準備をしていると、売り場のヘルプに出ていたオーナーが戻ってきて「芙芝さん、ちょこっとだけいい?」と声をかけられる。

「実は相談があって」

そう言って見せてくれたのは、赤と茶色をベースにした秋らしい親子コーデだ。

「新作ですか? 素敵ですね、秋が待ち遠しいです」

まだ七月の上旬だが、そろそろ秋服の入荷に向けて準備が始まる。中旬にはもう、店頭に『NEW ARRIVAL』の札とともに長袖が並ぶのだ。

「素敵でしょう? イタリアでデザイナーをしている友人が先行して送ってくれたの。またモデルをお願いしようと思ったんだけど、今回はちょっと問題があって」

そう言って、オーナーはコーディネート一式をラックに並べる。

お母さん用、男の子用、女の子用、そしてラックにはもう一着。

「パパが着る服、ですか」

大きめの一着を見て、男性用だと気づく。この店ではママコーデを扱うことが多いのだが、今回は珍しくパパコーデもあるらしい。

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