御曹司様、あなたの子ではありません!~双子ベビーがパパそっくりで隠し子になりませんでした~
「そうなのよ……。芙芝さん、弟さんと仲がいいって言ってたから、お願いできるようならちょうどいいかと思ったんだけど、ちょっと難しいかしら? もちろん無理にとは言わないわ。嫌だったら断ってくれて、全然いいんだからね?」

オーナーが気遣わしく尋ねてくる。

モデルの依頼はもともと、私がシンママで服飾費を捻出するのが難しいと知っているオーナーのご厚意だ。モデルを口実に親子揃って着られる服をプレゼントしてくれている。

とはいえ、今回の依頼は解釈の仕方によっては失礼でもある。私は気にしないけれど、父親がいないのにメンズの服をプレゼントされたと嫌がる人もいるだろう。

紅葉は着てくれるかな……。私は数秒悩んだけれど、これはこれで記念かな、なんてポジティブに考える。

「……弟でもよければお引き受けします」

ブログに上げるときは顔も隠すし、紅葉にはただのモデルだからと説明すれば問題ないだろう。代わりに服をあげると言えば、逆に喜んでくれるかも。

私の言葉にオーナーは安堵する。

「よかったわ。じゃあこれ、受け取って。ちょっと重いから、気をつけてね」

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