御曹司様、あなたの子ではありません!~双子ベビーがパパそっくりで隠し子になりませんでした~
「ふたりは元気? ちゃんと紅葉の言うこと聞いて、いい子にしてる?」

『今のところお行儀よくしてるよ。もう少ししたら帰るから』

それだけ告げて通話が切れる。観念してスマホをバッグにしまい、皇樹さんに目線を向けた。

「……紅葉くんは、大丈夫そうだった?」

彼がわずかに眉をひそめて尋ねてくる。

「はい。今、子どもたちと一緒に夜ご飯を食べているそうです」

「そうか」

皇樹さんがゆっくりとこちらにやってくる。私が逃げ出さないのを確かめながら、ソファの一番遠い席に腰を下ろした。

「楓。聞きたいことはたくさんあるけれど、まずはひとつだけ教えてほしい」

誠実な眼差しが、こちらに向く。

「あの子どもたちは、俺の子なのか?」

すうっと息を吸って、テーブルを挟んで対角線上にあるひとりがけのソファに腰を下ろす。

素直に打ち明けるべきか、隠し通すべきか――彼のためを思えば後者だろう。

たとえ無理な嘘をつくことになっても、バレバレだとしても。私が違うと言い張れば、彼は今のままでいられるのだから。

「違います。あれは皇樹さんの子どもではありません。別の方の子どもです」

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