御曹司様、あなたの子ではありません!~双子ベビーがパパそっくりで隠し子になりませんでした~
「お父様が、お亡くなりに……?」

「ああ」

皇樹さんはわずかに目を伏せて、瞳に憂いを混じらせる。

父親が亡くなって心が痛まないわけがない。血の繋がりのない私でさえ、あのお元気だったお父様が亡くなったと聞いて、悲しいもの。

「お悔み申し上げます……その、本当に……」

声を詰まらせてうつむくと、彼が柔らかく息を吐くのが聞こえた。

「覚悟していたから。今は割り切って、父に誇れる生き方をすることだけを考えているよ」

もうすでに皇樹さんは未来を見つめている。いや、そうせざるを得ないのだろう。

悲しみに浸る時間もない、過酷な立場でもある。

「父が亡くなると同時に跡を継いだ。今携わっているイギリスでの仕事を引き継いだら、日本に戻って、グループ代表としての職務に集中するつもりだ」

「……無事に跡継ぎになれたんですね」

その言葉を聞いてホッとした。

「夢が叶いましたね」

自力で手繰り寄せたものだから、叶ったというよりは達成したというべきかもしれない。彼は「ああ」と頷く。

「叶えていない夢は、あとひとつだけになった」

< 124 / 255 >

この作品をシェア

pagetop