御曹司様、あなたの子ではありません!~双子ベビーがパパそっくりで隠し子になりませんでした~
第五章 俺の特別なひと
楓に初めて会ったのは、八歳のとき。将来結婚する女性だと言われても正直ピンとこなかった。
ただ、かわいらしい妹ができたようで、それなりに嬉しかったのは覚えている。
「好きです。わたくしとお付き合いしていただけませんか?」
高等部に入学して三カ月、このシチュエーションはもう何度目かわからない。
中等部までは男女交際禁止だったので、ここまであからさまに告白されることはなかったのだが。いっそ高等部でも禁止にしてほしい。
加えて、今日は廊下のど真ん中で、周囲にほかの生徒がいるにもかかわらず告白されたのでまいってしまった。
相手は誰だからわからない。が、胸もとのリボンの色を見るに、一学年上のようだ。
……話したこともないのに、どうして好きだってわかるんだ?
正直、俺には理解できない。
「すみません。許嫁がいますので、ほかの女性とはお付き合いできません」
『許嫁がいる』――その呪文のような言葉を紡ぐと、大抵の女性は納得してくれる。私が振られたわけではない、仕方がないのだとあきらめがつくらしい。