御曹司様、あなたの子ではありません!~双子ベビーがパパそっくりで隠し子になりませんでした~
しかしこの女性に限っては、教室に戻ろうとする俺の腕を掴んで「待って」と縋りついてきた。

「その方はご両親が勝手に決めたお相手でしょう? 皇樹さんは納得されているんですか?」

名字すら知らない相手に、馴れ馴れしく下の名前で呼ばれてしまった。自分も知られていて当然と考えているのかもしれない。おそらく結構な名家の出身なのだろう。

この学校には、良家のご子息ご息女がたくさん通っている。だからこそ『許嫁』なんていう浮世離れしたワードを放っても、自然に受け入れてもらえるのだ。

「ええ。俺にはもったいないくらい、素敵な女性です」

その手を離してください、そう言いたいのを堪えて、失礼のないように微笑みかけると。

「その女性をわたくしに紹介してください! どちらが皇樹さんのお相手に相応しいかはっきりさせますわ」

ここまで粘る女性は初めてで面倒になってきた。

「失礼、授業に遅れますので」

手を振り払うと、彼女はぽかんと目を見開いて間抜けな顔になった。男性からぞんざいに扱われたのは生まれて初めてだったのかもしれない。

しかし、あきらめずに俺の背中に向かって叫ぶ。

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