御曹司様、あなたの子ではありません!~双子ベビーがパパそっくりで隠し子になりませんでした~
遺恨を権力でねじ伏せられる相手で安心した。後先を考えなかったわけではないが、楓を害する芽を摘む方が俺にとっては重要だった。

「これ以上誰もかかわってこないように、『許嫁がいる』って、声を大にして主張してるんだけどな。どうしてみんな聞いてくれないんだろう」

「恋する乙女には都合の悪い事情は聞こえないんだよ」

「勝手に恋されても困る。面識もないのに」

「その顔に生まれたことを呪いなよ」

成元がけらけら笑う。彼も彼で良家な上に、外見も整っていて女性人気が高いらしいが、俺の陰に隠れてやり過ごそうとするところはずるい。

「でさー。その許嫁ちゃんはどんな人なの? 俺、ずっと気になってるんだけど」

「言わないよ」

「もしかして断る口実? 実はいないの?」

「いる。詮索されたくないだけだ」

すると、成元が俺の肩に腕を回し、顔を近づけてきた。

「俺の口の堅さ、知ってるじゃーん?」

確かに彼は、チャラい言葉遣いとは裏腹に、情報を腹に溜め込みここぞというときに使う知性を持つ男だ。口が堅いと言えなくはない。だが――。

「教えるメリットがないだろ」

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