御曹司様、あなたの子ではありません!~双子ベビーがパパそっくりで隠し子になりませんでした~
みすみすネタを提供してやる義理はない。腕を振り払い教室に入ると、うしろからおどけたような声が飛んできた。

「せっかく匿ってやったのになあ」

ひくりと頬が引きつる。中等部卒業の日、シャツのボタンをもらおうと追いかけてきた女子生徒たちから匿ってくれたのは確かに成元だった。

「今年のバレンタインもひどいだろうなあ。でも、もう匿ってやれないかもなあ」

「……わかったよ」

まあ、軽く情報を流して恩を売っておくのもいいかもしれない。この男なら、楓に害するような真似はしないだろう。したら許さない。

渋々了承して自席についた。



「なんだ、許嫁の子、まだ中一かあ。じゃあ、あと三年はお預けだな」

放課後、人気のない中庭の一角で、楓のことを話した感想がそれだった。

「待て。お預けってなんだよ」

「決まってんじゃん。さすがに中学生とはまずいだろー」

いかがわしいであろう内容に、俺は壮絶に眉をひそめる。

「いや、高校生もまずいだろ」

「え? 高校生はよくない? むしろ、高校生がよくない?」

「ダメに決まってるだろ!」

思わず口調が荒くなる。

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