御曹司様、あなたの子ではありません!~双子ベビーがパパそっくりで隠し子になりませんでした~
彼女の方から誘わせてしまったことに、罪悪感を覚える。今すぐ抱いてしまおうか――そんな誘惑が頭をよぎり、理性を総動員して抑え込む。

優しいお兄さんのまま、でもほんの少しだけ本音を覗かせて、ソフトなキスで応じると、彼女は大人っぽい瞳でうっとりとこちらを見上げてきた。

『この続きは二十歳になってからだよ。……いいね?』

まるで自身に言い聞かせるように楓をなだめる。

『この続き』まであと一年弱。彼女を女性として抱く日が来たら、プロポーズをしよう。卒業したらすぐに結婚しよう。

彼女への執着は、我慢し続けてきた反動なのかもしれない。

とにかく、清くて美しい彼女を自分だけのものにしたいと同時に、自身の中のけだものを抑え込むので精一杯だった。




しかし、二十歳を目前に芙芝紡績は売却に近い形の提携を結び、代々続く経営の任から退いた。

「ちょうどよい機会だ」

身内だけの会食で、そう揚々と発言したのは三条洸次郎――父の弟で、久道グループの経営の一端を担う男だ。

父とは歳の離れた兄妹で、三十代後半とまだ若い。

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