御曹司様、あなたの子ではありません!~双子ベビーがパパそっくりで隠し子になりませんでした~
これまでは大人しく父に従ってきたが、近年では一関連会社の社長という地位に満足できなくなったのか、野心を持て余しているように見える。

「芙芝紡績に執着する必要など、端からなかっただろう? この機に、もっとよいコネクションを築ける家との縁談を考えてみては。私が手配するよ」

妙に政略結婚に乗り気なのは、自身が縁談を経験しグループの拡大に役立てたから――などと本人は言っているが、そこまで献身的な人間ではないことは俺も父も知っている。

自身と繋がりの深い経営者の親族を俺に嫁がせ、父の死後、裏から操りたいのだろう。俺をお飾りの代表に祭り上げ、その背後で実権を握りたいにすぎない。

「芙芝の家とは、妻が親しかったんだ。ぜひとも皇樹の未来の妻にと。だが、そうだな……見直してみるのも悪くない」

そう口にしたのは父。最近、持病の具合がよくないようで食事制限も多く、特注の懐石を作らせたもののあまり食が進んでいないように見える。

「お言葉ですが。政略結婚による規模拡大など、たかがしれています」

俺の反論にぴりりと空気が張りつめた。叔父は涼しい顔をしながらも、楯突かれ腹を立てているのがわかる。

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