御曹司様、あなたの子ではありません!~双子ベビーがパパそっくりで隠し子になりませんでした~
「結婚に頼るのではなく、経営自体を見直すべきです」

叔父の口もとに嘲笑が浮かぶ。なにしろ俺は、社会人になってまだ一年目、ひよっこもひよっこだ。経営どうこうを謳ったところで、なんの説得力もない。

父も挑発的な笑みを浮かべた。

「それができれば苦労はないんだがな。政略結婚は確実な後ろ盾となる。どれだけ凡庸な経営者でも、それに頼ればトップに立てる。いわば保険だ」

このひと言に反応したのは叔父の方だ。小バカにされたと思ったのだろう、無言で口の端を引きつらせている。

俺は「今の私がなにを言っても大言壮語でしょうけれど」と前置きして、父に向き直る。

「見ていてください。政略結婚などに頼らなくても、久道グループを発展させてみせます」

その言葉に、父の表情がふわりと柔らかくなる。もともと、俺の意見に反対する気はなく、覚悟が問いたかっただけらしい。

「そこまで芙芝のお嬢さんを気に入っているのか?」

「ええ。ずっと婚約者だと思って接してきましたから。今さら結婚できないと言われても」

苦笑して答えると、父も緩やかな笑みで応じてくれた。

「好きにしろ。その代わり、口だけの男にはなるなよ」

「もちろんです」

< 139 / 255 >

この作品をシェア

pagetop