御曹司様、あなたの子ではありません!~双子ベビーがパパそっくりで隠し子になりませんでした~
柑音は大人しくて泣き虫で、一応お姉ちゃんのはずなのに、いつも弟の柚希に泣かされている。

――と、のんびり眺めている場合ではなかった。家を出るまであと十分、ラストスパートをかけなければ。ふたりがテレビに気を取られている間に、リビングの片隅で超高速メイクを施す。

エンディング曲が始まって、歌のお兄さんとお姉さんの美声が響き始めた。

ふたりが夢中になってくれている間に、急ぎ寝室に向かい服を着替える。

六月の下旬、梅雨とは思えないほど暑い気温が続いていて、服はすっかり夏仕様。

子どもたちはTシャツにショートパンツ、私は涼しげなペプラムトップスに綿の七分丈パンツを穿く。

今日は親子でリンクコーデ。トップスは三人ともギンガムチェックで、柚希が青、柑音が赤、私が黒だ。ボトムスは揃ってベージュ。

これらは私が勤めている子ども服のセレクトショップで取り扱っていて、この夏のイチオシ商品である。

普通に買うと結構なお値段なのだが、特別にいただいた。もちろん社員とはいえ、ただで服をもらえるわけではなく、ちょっとした条件を呑むことで支給されるのだが――家計が厳しいのでとても助かっている。
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