御曹司様、あなたの子ではありません!~双子ベビーがパパそっくりで隠し子になりませんでした~
了承すると、ようやく父が食事を口に運んでくれた。とはいえ食事のペースは遅い。

十年、二十年と経験を積んで代表の座を継ぐ予定だったが、もしかしたら代替わりのタイミングは、もっと早く訪れるかもしれない。

考えたくもないが、頭の片隅に入れておく必要がある。そのときまでに、誰もが納得する実績を作っておかなければ、政略結婚させられかねない。

「皇樹の将来が楽しみだ」

叔父はそう言って、薄ら寒い笑みを浮かべた。



久道家に嫁ぐ資格がない、そう思い悩んで逃げ出そうとした楓を捕まえて、これまで頑なに隠していた情熱を暴露した。

俺だけのものにしたいという独占欲。ひび割れていく理性。

二十歳の誕生日、待っていましたといわんばかりに彼女をかき抱いて、自分のものにした。我ながら大人気ないとは思ったが、喜ぶ彼女も彼女で悪い子だ。

自身の腕の中で眠る彼女を見て、その愛らしさに吐息を漏らす。

だが楓はもう清らかなだけの女の子ではない。

この先の長い人生を家の力に頼らず、ひとりで強く生きていくための術を模索していくつもりのようだ。

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