御曹司様、あなたの子ではありません!~双子ベビーがパパそっくりで隠し子になりませんでした~
……本当は、卒業にあわせてプロポーズしようと思っていたのだけれど。

就職に向かって前向きに頑張る彼女を否定できず、背中を押した。

父の容態は悪化していて、代替わりのタイミングは早々にやってきそうだ。早めに手を打たなければ、父の力が衰えた隙に、叔父に代表の座をかっさらわれるだろう。

俺はイギリス行きを決意し、楓に待っていてほしいと伝え、婚約指輪を渡した。

今さらながらに、あのとき叔父が浮かべていた挑発的な笑みの理由をよく考えておくべきだったと思う。

まさか楓を唆し、婚約を邪魔してくるとは。

警戒し、あらかじめ手を打っておけば、こんな事態にはならなかった。己の考えの甘さが憎らしい。





「はぐらかさないでください」

三年ぶりに楓と再会し、事情をすべて聞いたあと。

再渡英を控え、俺は叔父の秘書に連絡をつけ、彼のいる久道運送本社の社長室を訪問した。

「楓に誤った情報を吹き込んだのはあなたですね。俺がイギリスで婚約をしたと」

< 141 / 255 >

この作品をシェア

pagetop