御曹司様、あなたの子ではありません！～双子ベビーがパパそっくりで隠し子になりませんでした～

楓から首謀者の名前を直接聞いたわけではないが、そんなことを画策するのは彼しかいない。なにより許嫁が楓であることを知っているのは、父と叔父、一部の親族など限られた人間しかいないのだ。

「誤解だよ」

四十代になった彼は、相変わらず小洒落たイタリアンスーツに身を包み、柔らかくパーマした黒髪をかき上げ、皮肉めいた笑みを浮かべた。

「確かに楓さんには会ったけれど、皇樹が『婚約した』だなんて言ってないよ。ああ、ハワード家の話は少ししたかな？　縁談の話が持ち上がっただろう？」

叔父が勝手に持ち上げた縁談話。もちろん、即座に断っている。

「楓さんは謙虚でかわいらしい女性だね。だが、悪いけど皇樹には釣り合わないかな。久道家に嫁ぐ者は、『女帝』と呼ぶに相応しくないと」

「それを……楓に言ったのですか」

冷ややかに尋ねると、彼は「とんでもない！」とソファに脚を組んで座った。

「彼女が傷つくようなことは口にしていないよ。なんの覚悟もない一般人の女の子には酷だろう？」

言う価値もないとばかりに、小バカにした顔をする。