御曹司様、あなたの子ではありません!~双子ベビーがパパそっくりで隠し子になりませんでした~
「ですが、物欲に蓋をしてあえて言わせていただきます。こういうものをほいほい買い与えてはいけません。働かずにご褒美を手に入れたら、ダメ人間になってしまいます」

「それはまあ……確かにそうかもしれない」

ご褒美という意味では、この三年の苦労を思えば贅沢をする権利は充分にあると思うのだが。

とはいえ楓の言い分も正しい。なんの事情も知らない子どもたちにとってみれば、突然おもちゃを山ほど与えられ、ありがたみもなにも感じられないだろう。

「わかった。今後、おもちゃを買うときは気をつける。とはいえ、これまで楓たちが頑張ってきたのは事実だし、今後はうんと幸せになってもらおうと――」

「それですけど、皇樹さん。贅沢ができないから不幸だなんて、思ったことはありません」

楓が両脇に柚希と柑音を抱え込む。楓が三年かけて培ってきたもの、彼女にとってはなにより大切であろう、愛らしいふたつの命。

「私はふたりがいるだけで幸せです。この子たちは、皇樹さんが私に与えてくれた宝物だから」

凛と宣言され、目から鱗が落ちた気分だった。

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