御曹司様、あなたの子ではありません！～双子ベビーがパパそっくりで隠し子になりませんでした～

こんな表情をする楓は、初めてだ。他人に有無を言わせない、確固たる自分を持つ表情。

以前の彼女はよく言えば柔軟、あえて悪く言うなら他人の意見に揺らぐような弱さや脆さがあった。だが今の彼女にはブレない芯が見える。

これが三年分の成長？　いや、母親になったから？

驚いて彼女を見つめていると。

「ママ、だめでしょ」

楓の左脇にいた柑音が、突然俺の前に立った。……いや、正しくは楓の前に立ち塞がったのだ。まるで俺を守ろうとするかのように。

「いじめちゃ、だめでしょ？」

いつも弱弱しくしていた柑音が、珍しく声を強くして楓に向き直る。柚希も柑音の隣に並んだ。

「そうだよママ。いつもぷれぜんとくれて、ありがとでしょ？」

人からものをもらったらありがとう、これも母の教えなのだろう。楓はなんて説明したものかと「え、ええと……」と困惑している。

「ママ、ごめんなしゃいは？」

「ありがとでしょ？」

ふたりから責められ観念したのか、楓は「ごめんなさい……ありがとう」と小さく頭を下げた。

「大丈夫。喧嘩しているわけじゃないよ。ママは俺に大事なことを教えてくれてたんだ」