御曹司様、あなたの子ではありません!~双子ベビーがパパそっくりで隠し子になりませんでした~
楓はあわあわとして「わ、私がパパって教えたわけじゃないんだけどっ……! 紅葉が教えたのかな」と焦った顔をしている。

なんて答えたものだろう……やや悩んだあと、俺は「パパの部屋はないんだ」と素直に伝えた。

柑音が眉を下げて不安そうな顔をする。そういう顔は、小さい頃の楓そっくりで愛らしい。

「どうして?」

「お仕事でイギリスに戻らなくちゃならないんだ」

柚希は動揺すると逆に目つきが鋭くなるらしく、「もうあえないの!?」と責め立てるように尋ねてくる。負けん気の強いところは小さい頃の俺に似ているのかもしれない。

「そんなことはないよ。お仕事が終わればまた会える」

ふたりから求めてもらえたのが予想以上に嬉しくて、ふたりの頭に手を置くと。

「かのんのおへや、パパとはんぶんこする?」

思いもよらない提案をされて、目を丸くする。

「ゆずもー!」

「かのんがさき!」

そして思いもよらないところで喧嘩が始まり、柑音が涙目になる。微笑ましくて、新鮮で、愛おしくて、思わず「あははは」と笑い声が漏れた。

「大丈夫、お部屋の数が足りないわけじゃないんだ」

そう言ってふたりをなだめると「ここでねる?」「おふとん、ひく?」「おふとん、あるかなあ?」とリビングに布団を敷く算段が始まってしまう。そういえば、紅葉くんの家に泊まったときは、リビングで寝たと言っていたか。

俺と楓は顔を見合わせて、思わず笑ってしまった。





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