御曹司様、あなたの子ではありません!~双子ベビーがパパそっくりで隠し子になりませんでした~
写真を撮り終え、双子用のベビーカーに荷物を積み込み、いざ保育園へ出発! なのだが――。

「ゆず、こっちにのる」

柚希がベビーカーの左側を指さす。通園路的に車がよく見えて楽しいらしい。

「かのんも」

柑音は柑音で、公園の花が見やすいという理由で左側がいいのだそうだ。

「ちがうよ、ゆずだよ」

「かのんだもん」

また柑音がふええ……と悲痛な嗚咽を漏らし始める。

やっぱり今日もギリギリかあ、と私は肩を落としつつ、ふたりをなだめてマンションを出た。



「おはようございます! 遅くなって申し訳ありません!」

出社時間ギリギリでスタッフルームに飛び込むと、四人掛けのテーブルの奥側でノートパソコンを開いていた女性が顔を上げた。

「おはよう~。って、全然セーフじゃない?」

そう言ってパソコン画面の時計を確認し、朗らかに笑ったのは、この店のオーナーである木下莉々子(きのした りりこ)さん、五十歳だ。 

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