御曹司様、あなたの子ではありません!~双子ベビーがパパそっくりで隠し子になりませんでした~
「事情がはっきりしなかったあの時点では、適切な判断だろう」

父が冷静に反論する。

「そうでしょうか。身重の楓を放り出すのが、親として適切だったと? 紅葉が支援を名乗り出てくれなければ、楓もその子どもたちも無事に生きていなかったかもしれないのに」

「紅葉が……」

父が不愉快そうに片方の眉を跳ね上げる。紅葉の話が出るといつもこれだ。

「だいたいそれは楓が悪いのでしょう!?」

そう言って感情的に机を叩いたのは母だ。

「父親が皇樹さんだと言ってくれたら私たちだって!」

「言えるものなら、こうはなっていません!」

さすがに私も黙ってはいられなかった。

「事情を話せば、皇樹さんに迷惑がかかっていました。洸次郎さんに子どもを堕ろすよう指示されていたかも」

「だとしても、私たちにくらい事情を説明してくれてもよかったんじゃないの!?」

「言えば味方になってくれましたか!? 久道家の人間を敵に回しても?」

うちの両親が、話の通用する人たちなら事情を説明したけれど、残念ながらそうじゃない。それを代弁してくれたのは蓮兄だった。

「母さん。気軽に相談できる親子関係がなかったのは事実でしょう」

母が反論したそうにぐっと喉を鳴らす。しかし、長男で優秀な蓮兄にはめっぽう弱い。

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