御曹司様、あなたの子ではありません!~双子ベビーがパパそっくりで隠し子になりませんでした~
まだ子どものいない椿兄は、子どもたちの相手に苦戦していたのかもしれない。

「あれ? 話終わったの?」

そう言って廊下側からひょっこり顔を覗かせたのは、トイレに行っていたという柊兄。

「違うよ、脱走だよ、脱走」

「ありゃりゃ。そろそろ飽きてきた頃だったもんなあ」

柊兄と椿兄が揃って苦笑する。そんな中、父が柑音と柚希を見つめてぽつりと漏らした。

「こうして見ると、ふたりの子どもの頃にそっくりだ」

「え……?」

黒々とした髪、とくに柚希の凛々しい眉、意志の強そうな漆黒の目、それらは確実に皇樹さんの遺伝子だとわかるが……。

「私にも、似ていますか?」

「ああ。とくに柑音の鼻と口の感じは、楓の小さい頃によく似ているなあ」

そう言われたのは初めてで驚いた。私をずっと見守ってきた親だからこそわかるのかもしれない。

父はゆっくりと立ち上がり、こちらに回り込んできて膝をつく。

「私が、おじいちゃんです」

ちょっぴりかしこまった不思議な挨拶に、ふたりはきょとんと目を瞬かせて〝おじいちゃん〟を観察する。

「おじいちゃん? かのんのおじいちゃん?」

「ゆずのおじいちゃんだよ!」

「かのんでしょ!」
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