御曹司様、あなたの子ではありません!~双子ベビーがパパそっくりで隠し子になりませんでした~
またしてもひょんなことから言い合いになり、聞いていた父が苦笑する。
「ふたりのおじいちゃんだ」
母もやってきて、父の隣に座った。ふたりをじっくりと眺めて、驚いたように口もとを押さえる。
「こうして見ると、本当にそっくりだわ。皇樹さんにも、楓にも」
「もっと早い段階で子どもたちに会っていれば、皇樹殿が父親だと気づけたのかもしれない」
どこか寂しげな父の呟きは、まるで勘当したことを後悔するかのよう。
「……蓮の言うように、もう少し娘を信じて寄り添う道があったのかもしれない」
私と蓮兄は顔を見合わせる。父が自分の間違いを認めるのは、すごく珍しいことだから。
そんな微妙な空気を軽々と払拭してしまうのが、子どもたちだ。
「おじいちゃん! あそぼ!」
柚希のお誘いに、難しい顔をしていた父も「そうだな。なにをしてあそぶ?」と目もとを緩ませる。
そんな父を見て母もつられたのか、毒気を抜かれたように穏やかになった。
「あら。素敵な髪ね」
不意に柑音の編み込みを見つめて母が言う。
「ママにしてもらったの。かあいいでしょ?」
「ええ。ママは髪を結うのが上手なのね」
「うん。じょうずよ」
穏やかでのんびりとした柑音に合わせて、母が丁寧に会話をする。
私は柑音の編み込みを見つめながら、ふと思い出したことを口にした。