御曹司様、あなたの子ではありません!~双子ベビーがパパそっくりで隠し子になりませんでした~
「ああー! かのんがこぼしたー!」

柚希の声に大慌てで振り向くと、ローテーブルの上のカップが横倒しになっていて、麦茶が盛大にこぼれていた。座っていた柑音の洋服もびしょびしょだ。

「ああっ……大変」

慌てて布巾を持って飛んでいく。柑音はすでに半泣きで「ご、ごめんなしゃい……ひくっ……」と嗚咽を漏らしている。泣いて謝るくらいだから、反省は充分にしているのだろう。

「濡れちゃったね、今タオル持ってくる」

紅葉が洗面所に走る。私は布巾でテーブルの麦茶を堰き止めた後、柑音をその場に立たせた。

「上も下もびしょびしょだね。お着替えしないと」

すると、紅葉がフェイスタオルを三枚ほど抱えて戻ってきた。

「着替えはある?」

「うん。一式持ってきたから大丈夫」

その場の後片付けを紅葉にお願いして、私は柑音とともに脱衣所に向かう。

「柑音、ばんざーいして」

中に着ていたシャツまでびっしょりだ。ボトムスもスカートだけではなく下着まで。風邪を引く前にと濡れた服を手早く脱がせる。

「お着替え持ってきてよかったね」

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