御曹司様、あなたの子ではありません!~双子ベビーがパパそっくりで隠し子になりませんでした~
華やかなワンピースとハイヒール、肘には折り畳んだトレンチコートをかけている。確かに秋とはいえ日中のこの時間は、コートを着るには少し暑い。

高級ブランドのロゴが入ったスーツケースをゴロゴロと引きながら、お嬢様然として歩いている。放たれる高貴なオーラは、おいそれと話しかけてはいけないといった印象。

しかしわかりやすく困った顔をしているので、放っておくこともできず、すれ違いざまに「Excuse me.(すみません)」と話しかけた。

道案内程度の英語なら話せる。私が「Where would you like to――(どこに行こうとして――)」と話しかけようとすると。

「Give me a sec!(ちょっと待って!)」

なぜか焦った様子で制止されてしまい、思わずその場で直立する。

彼女は大きく息を吸うと、ん、んんっと一度咳払いをして、私に向き直った。

「家ヲ、探してマス」

少々カタコトではあるけれど、しっかりと聞き取れる日本語だ。もしかしたら、日本語で話しをさせて、という意味の『ちょっと待って!』だったのかもしれない。

「私の日本語、わかりマスカ?」

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