御曹司様、あなたの子ではありません!~双子ベビーがパパそっくりで隠し子になりませんでした~
その割に彼女に悲壮感はなく、幸せそうで、どこかわくわくしているようにも見える。きっとその一度の出会いが素晴らしいものだったのだろう。

「結婚おめでとうございます。どうぞお幸せに」

彼女は「ありがとうございマス!」と大きく頷いて、自身の体をぎゅっと抱きしめる。

「会ったのは一度。でも、問題アリマセン。私たち、激しく愛し合いマシタ」

思わず「えっ」と驚きの声を漏らして赤面する。つまり、その一度でベッドインを?

出会って即だなんて……カルチャーショックというかなんというか。いや、その男性がそれだけ素敵だったということなのかも。

「だから、夫に会いに来マシタ!」

彼女が力説する。驚くことばかりではあるけれど、わざわざ日本語を勉強して、ここまで会いにくるほどなのだから、彼女の愛は深いに違いない。

そうこうしている間に目的地のすぐ裏手に辿り着く。やはり同じマンションを目指していたようで、彼女はマップと建物を見比べながら「ここデスネ!」と安堵する。

「ようやくご主人に会えますね」

正面玄関に案内しながら労うと、彼女は少々複雑な表情でかくんと首を傾げた。

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