御曹司様、あなたの子ではありません!~双子ベビーがパパそっくりで隠し子になりませんでした~
だとしたらなぜ私にプロポーズをしたのだろう。メアリーのことをどう思っているの?

「カエデ……?」

突然黙り込んでしまった私を、メアリーは不思議そうに覗き込んでくる。

そのとき、正面玄関の方で車のドアの開閉音がした。見れば、車寄せに一台の高級車が止まっていて、降りてきたスーツ姿の男性がマンションに入ろうとしている。

それを目にした瞬間、メアリーはトランク、そしてコートすらも捨て置いて走り出した。

「コウキ!」

男性――皇樹さんは驚いた様子で振り向く。

「君は……メアリー!?」

その言葉を皇樹さんがどんな顔で言ったのかはわからない。彼が振り向いた瞬間、私はすぐ脇にあった門柱の陰に隠れてしまったからだ。

「I’ve missed you!!」

メアリーの切なげな、でも幸せそうな声が響いてくる。

ちらりと覗き込むと抱き合うふたりが見えて、慌てて体を引っ込めた。

「What brings you here――」

皇樹さんの返答を聞き終える前に、足が勝手に逆方向へと動き出す。ここにいてはならない、いるのが怖いと感じて。これ以上ふたりの会話を聞いてはならないと直感していた。

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