御曹司様、あなたの子ではありません!~双子ベビーがパパそっくりで隠し子になりませんでした~
皇樹さんはイギリスにメアリーという妻がいるにもかかわらず、私にプロポーズしたのだろうか。

彼はそんな不誠実なことはしない――そう自身に言い聞かせながらも説明がつけられない。

メアリーはなんの事情も知らず、今も純粋に皇樹さんを愛している。父の仕事のため、とても大事な結婚だと言っていた。

『激しく愛し合いマシタ』――愛おしげに自身の体を抱きしめるメアリーを思い出して、思わず口もとを押さえる。

……皇樹さんは、メアリーを愛したんだ。

私が連絡を絶っていた三年間。彼がなにをしようと、誰を愛そうと、とても文句は言えないけれど。

なぜだか胸が冷たくて苦しい。心のどこかで、ずっと私だけを愛し続けていてくれたのだと、都合のいい解釈をしていたみたいだ。

皇樹さんは、私とメアリーのどちらを選ぶのだろう。彼女の言う通り、これが政略結婚だとするならば、メアリーを選ばざるを得ないのではないか。

すでにイギリスで籍を入れているというのなら、なおのこと。

向き合う勇気が持てず、私はそのままマンションをあとにした。




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