御曹司様、あなたの子ではありません!~双子ベビーがパパそっくりで隠し子になりませんでした~

「久しぶりだね、皇樹くん。それとも、久道代表と呼んだ方がいいかな?」

「そう呼んでもらえるのは光栄ですが、名前の方がワガママが言えて気が楽です」 

彼は、あっはっは、と豪快に笑う。

早々に運ばれてきたのは、日本酒とボリューミーな肉料理。細々した小皿が嫌いな彼のために、最初から最後まで肉と魚のメイン料理が続くようオーダーした。

彼は「わかっているなあ、君は」と笑って、豪快に肉を頬張り、日本酒を喉に流し込んだ。

「洸一の葬式には行けなくてすまなかった」

父が亡くなった当時、近堂会長は中東へ視察に行っていたそうだ。すぐに帰国するわけにもいかず、式典当日は花と電報をもらった。

「後日、実家に来てくださったと聞きました。私こそ不在にしていて申し訳ない」

「今、顔を見られたからよしだ。生きてりゃ一緒に酒が飲める」

そう言って酒器を掲げる。

「近堂会長には長生きしてもらわないと。あなたが目を光らせているうちは、業界は安定しているでしょうから」

重鎮と恐れられるだけあって、その役割は大きい。以前は父もその一端を担っていたが、父亡き今は彼が頼りだ。

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