御曹司様、あなたの子ではありません!~双子ベビーがパパそっくりで隠し子になりませんでした~
物騒なワードに目を閉じる。洸次郎さんが現在の地位に不満を持っていて、裏で画策していることについては、こちらもすでに感づいていて、証拠集めに奔走しているところである。

「後手には回ってしまいましたが、いい加減決着をつけるつもりで準備を進めています」

「それを聞いて安心した」

彼が空になった酒器を置き、背もたれに深く身を預ける。すぐさま次の酒と魚料理が運ばれてきて、テーブルが華やかになる。

「老輩からもひとつ、餞別を贈ろうか。おい、菊田」

空気のように存在感を消して部屋の隅に立っていた秘書が、ようやく前に進み出た。懐から一枚の紙を取り出し、俺に差し出す。

その内容を見て、俺は目を大きく見開いた。

「これは……どうやって」

「金と信頼があれば、手に入らないものはない」

それは洸次郎さんとRHBエアサービスがただならぬ繋がりを持つという証拠。これがあれば洸次郎さんを言及できる。だが――。

「ありがとうございます、と言いたいところではありますが」

その用紙を折り畳み見なかったことにして、菊田さんに返却する。

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