御曹司様、あなたの子ではありません!~双子ベビーがパパそっくりで隠し子になりませんでした~
「これを受け取っては、いざというときにあなたに意見できなくなります」

恩を売られるとはそういうことだ。彼は父の友人であると同時に、同業他社のライバルだと忘れてはならない。

近堂会長は目を丸くしたが、痛快と言わんばかりに「あっはっはっは!」と大声をあげて笑った。

「それでこそ洸一の息子だ」

パン、と大きく手を叩き、満足した様子で秘書を下がらせる。

「近頃の君を見ていると、若かりし頃の洸一を思い出すよ。同世代なのになぜ、ああも違いが出るのかと羨んだものだ。しっかりと君に受け継がれているようで安心した」

「期待に沿えるよう精進します」

いつか彼のように、そして父のように。重鎮と呼ばれ慕われ、ときに恐れられる偉大な経営者となるために、まだまだ俺には努力が必要だ。

「困ったらいつでも言いなさい。一度くらいは貸し借りなしで力になる。洸一への恩返しだ」

「ありがとうございます」

空の酒器にあらためて最高級の日本酒を注ぎなおし、父への献杯とした。



会食を終えた俺は、秘書に運転を頼みマンションに戻ってきた。

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