御曹司様、あなたの子ではありません!~双子ベビーがパパそっくりで隠し子になりませんでした~
日本語などまったくできなかったはずの彼女が流暢に話し始めたのを見て、唇を引き結ぶ。これだけ話せるようになるまで、どれだけ勉強したことだろう。

「私、いい妻になりマス」

……許せない、そう感じて強く拳を握り込む。

純真な彼女を騙し、利権を掴むための道具にした実の父親が、そして彼女の気持ちを踏みにじった冷酷な叔父が。

『……メアリー。私には将来を約束した人がいるのです』

彼らへの怒りを押しころしながら、残酷な現実を告げる。

彼女は悪意ある者たちに騙された被害者であって、落ち度などまるでない。だが、真実は伝えなくては。

『あなたもどうか、一度会っただけの私などではなく、心から愛せる男性と一緒になってください。お願いです、政治の道具にならないで』

彼女は震えながら俺の言葉を聞いていたが、ないがしろにされたと思ったのか、俺に掴みかかってきた。

『どうして!? 私たち、愛し合ったじゃありませんか!』

『……それは、どういう?』

『パーティーのあの日、私を抱いてくれたでしょう!?』

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